テルニャシュカとは?
「テルニャシュカ(ロシア語:Тельняшка)」とは、ロシア軍や旧ソ連軍で使用されているボーダー柄のシャツまたはボーダー柄のTシャツのことを指します。このシャツは就寝時に用いるスリーピングシャツ(就寝時のシャツ)としても愛用されていることで有名です。
一般にボーダー柄のシャツは「ブレトンシャツ(仏ののブルターニュ地方に起源をもつため、英語発音でブレトン)」とも呼ばれます。ブレトンシャツは世界の船乗りたちに長く親しまれ、ロシア海軍、フランス海軍で着用されています。
しかし、ロシアではボーダー柄のシャツ「テルニャシュカ」と言えば特別な意味を持つ象徴的なアイテムなのをご存知でしょうか?ロシア軍では海軍に所属する水兵だけでなく、歩兵や海軍以外の陸戦を担う部隊でもテルニャシュカが着用されているのです。
敵からのカモフラージュが必要なロシア空挺軍(VDV)もテルニャシュカを愛用?!
ロシア空挺軍(VDV)といえば、水色と白のテルニャシュカです。海軍とは違ってカモフラージュが重視されるはずの陸戦部隊で、なぜ人の目につくような派手なボーダー柄のテルニャシュカが愛用されているのでしょうか?
彼らがリスクを犯してまでテルニャシュカが愛用する理由・・・それはテルニャシュカの歴史にを知れば納得できます。
テルニャシュカの歴史
海軍のテルニャシュカ
ロシアで最初に「テルニャシュカ」が導入されたのは帝政時代のロシア海軍です。それから現在のロシア軍に至るまで「テルニャシュカ」がずっと着用されています。ロシアでは19世紀半ばにオランダ海軍の制服が流行し、ロシア海軍でもこれによく似たスタイルの制服が採用されました。大きく開いたジャケットの胸元からちらりと見えるテルニャシュカは非常にカッコよく映ったため、ファッションアイテムとして支持され意味合いが強かったようです。「テルニャシュカ」を着用したロシア海軍の水兵たちは、露土戦争、日露戦争、そして第一次世界大戦を戦い、そのボーダーシャツとともに歴史を刻んでいきました。
また、「テルニャシュカ」はコットンとウールを織り交ぜて作られているので
- 保温性が高い
- 体にフィットして動きやすい
- 乾燥が早い
- スリーピングシャツ(就寝時のシャツ)としても利用できる
- しかも安いという
実用的なメリットのあるシャツです。
さらに”その特徴的なボーダー柄によって船から転落した場合でも目立つから”という海軍ならではの採用理由があります。
カッコいい!実用的で安い!使いやすい!目立つ!ということで、「テルニャシュカ」はロシア海軍で長く愛用されることになります。
陸に上がったテルニャシュカ
1917年のロシア革命は、「テルニャシュカ」の意味を一変させました。バルト艦隊の水兵たちが革命に加わったため、小銃を持ってテルニャシュカを着た水兵たちの姿が「革命のガーディアン(革命の守護神)」のシンボルとして捉えられるようになったのです。
そして、第二次世界大戦では、主戦場が地上だったために多くのソビエト海軍軍人たちが銃を手にとり地上戦に参加しました。もともと船乗りである彼らは地上戦に参加することを強要されたのではなく、自発的に参加したともいわれています。このような美談を通じて、「テルニャシュカ」にはロシア人の誇り、仲間への献身、団結の象徴としての意味が見いだされるようになり、真の戦士としてのシンボルというイメージが作り上げられていきました。
空挺軍(VDV)と特殊部隊スペツナズ
第二次世界大戦後、海軍や海軍歩兵の他にも「テルニャシュカ」は
- 空挺軍(VDV)
- 参謀本部情報総局(GRU)
- スペツナズ
- 連邦保安庁(FSB)
- 国境軍、国家親衛隊(VNG、旧内務省国内軍)
- 連邦警護庁(FSO)大統領連隊
で公式に採用されます。FSB軍事防諜部やFSBスペツナズの将校たちもテルニャシュカを着用しています。こうしてソ連軍全体で「テルニャシュカ」が使用されるようになりました。
その後1978年にソ連はアフガニスタン戦争に介入。そこで戦う空挺軍(VDV)やGRUスペツナズの姿によって、「テルニャシュカ」は軍のエリートとしてのイメージを確固にしました。「テルニャシュカ」を着た英雄がゲリラと戦う姿はテレビで広く紹介され、子供たちも「テルニャシュカ」を着たがりました。
またアフガニスタンの経験を有する、参謀本部情報総局(GRU)スペツナズは、国境軍や国内軍など他省庁のスペツナズの教育に携わり、それが各省庁スペツナズに広がっていきます。精鋭部隊が全員テルニャシュカを着用することで、テルニャシュカにはテロと戦う戦士としてのイメージも加わっていきました。
[kanren postid=”6257″]
テルニャシュカにまつわる面白い話
第二次世界大戦のソ連軍水兵はあえて「テルニャシュカ」を着た?
第二次世界大戦の地上戦に参加した水兵たちは陸軍の戦闘服に着替えはしましたが、その下にテルニャシュカを着用し続けました。彼らにとってはカモフラージュよりもテルニャシュカを着る事のほうが大事だったのです。ジャケットや外套を脱ぎ捨てて、テルニャシュカだけで激しい銃剣突撃を行ったともいわれています。こうした威勢の良さを示すエピソードは実にロシア人好みなのでしょうね。
ロシア海軍歩兵の攻撃を受けたナチスドイツ軍は、彼らを「シマシマ模様の悪魔」と呼んだそうです。
ロシア海軍が好んで使っていた「我々は少数、しかしテルニャシュカを着ている(Нас мало, но мы в тельняшках.)」というフレーズは有名で、ロシアでは広く知られています。
[aside type=”normal”]Нас мало, но мы в тельняшках・・・「ナス マーラ、ノ ムィ フ テルニャーシュカフ」と発音し、「多勢に無勢でも負けるもんか」という意味です。なんだか勇気の出る言葉じゃないですか!?あなたもテルニャシュカに身を包みましょう![/aside]
空挺軍(VDV)のテルニャシュカが示す、ロシア人の不屈の精神
1959年、空挺軍(VDV)副司令官リソフ中将が雨の降る湖上でのパラシュート降下を含む演習を行いました。リソフ中将は全ての空挺降下参加者たちにテルニャシュカを手渡し、「勇敢な君たちは「空挺兵」だけでなく「海の挺進兵(ていしんへい)」にもなったのだ」と語りかけたそうです。リソフ中将の意図としては、あらゆる気象条件下で行動する空挺兵であるのみならず、第二次世界大戦で水兵たちが発揮したような比類なき不屈の精神や勇気を示して欲しいと伝えたかったのかもしれません。
[aside type=”normal”]他にも、空挺軍(VDV)がテルニャシュカを着るようになったのは、ボーダーシャツやボーダーTシャツを着たラグビー選手が活躍する当時の流行ドラマに影響されたのかもしれないという話もあります。[/aside]
最終的にテルニャシュカが空挺軍(VDV)の正式装備とされたのは、1969年のことでした。
2013年からロシア軍はオールシーズン・システム(VKBO)と呼ばれる戦闘服を採用しています。2014年のウクライナ危機や2015年のシリア作戦で、VKBOデジタルフローラ戦闘服で活動するロシア軍兵士の姿はよく知られるようになりました。
テルニャシュカは普段着にもぴったり
テルニャシュカのシマシマ模様は、もともと人の目を引くためにつけられたともいわれているように、テルニャシュカはデジタルフローラのジャケット以外にもよく映えます。こうしたファッション性の高さもさることながら、保温性に優れ、体の動きを妨げることはありません。しかもアンダーウェアやスリーピングシャツとしての機能を持っており、一人一着は持っていたいほど優秀です。
テルニャシュカはサバゲーや戦闘用途以外の日常的な私服でも、十分着回せるものといえるでしょう。上のインスタグラムのように、ロシア人の間ではテルニャシュカは普段着として使用されています。
VKBOデジタルフローラ戦闘服を持っているサバゲーマーが多いことは周知の事実です。空挺軍(VDV)の兵士たちが着るデジタルフローラ戦闘服の胸元からはテルニャシュカがちらりと見えており、このファッション性の高さがポイントとなっています。テルニャシュカはサバゲーでテンションを上げるには絶好のアイテムといえるでしょう。
テルニャシュカを手に入れるには?
株式会社MOMCOMは、ロシア人デザイナーを起用し、日本人のサイズに合うテルニャシュカを自社生産中(10月ローンチ予定)です。「本物の勇気」をお届けします。
こんなテルニャシュカも・・・
「シベリア・アルコール・グループ」はテルニャシュカというウォッカを2015年から販売しています。
小売価格は144ルーブルから160ルーブルで、少量のボトル入りアルコールの需要を満たすように設計されています。 0.25リットルの平らなフラスコボトルは人間工学に基づいており、旅行に最適です。バックパックやポケットに簡単に収まります。(http://www.asg.ru/press_center/detail.php?ID=971より)
コメント