世界の戦闘糧食を「実食」しよう!【アメリカ軍編】
軍隊の兵士たちが戦場や訓練中に食べる食事、いわゆる「戦闘糧食(レーション)」は、長期保存が可能で、調理不要という特徴を持っています。
その中でも、アメリカ軍の「MRE(Meal, Ready-to-Eat)」は特に有名で、ミリタリーファンやサバイバル好きの間では人気のアイテムです。
そもそも戦闘糧食(コンバット・レーション)とは何か?
おわかりかと思いますが、軍隊で消費される携行型の食品のことです。
想像して下さい。兵士は過酷な環境の中、ジャングルにいても、敵を偵察するためにボロ小屋に張り付いている間も、空腹を満たす(というか、生きるためにカロリーを摂取する)必要があります。
戦闘糧食の役割と目的
戦闘糧食は、単なる食事ではありません。兵士たちが過酷な環境下で活動し続けるために必要なエネルギー源であり、戦闘時のパフォーマンスを維持するための重要な要素です。
コンバット・レーションの価値はそこにあります。保存性や味に影響を及ぼす、など幾多の苦難を乗り越えて作られた戦闘糧食は、その国の文化や思想を凝縮したエッセンスと言えます。
アメリカ軍のMREレーションを実際に開封・試食し、詳しくレビューします。
本レポートは、MOMCOMのEC担当部が、実際にその国の軍で食料として使われている、いわゆる「ミリ飯=戦闘糧食(レーション)」のレビュー(感想)をお届けするものです。
さらに、各国の戦闘糧食との比較や、MREの歴史、メリット・デメリットについても徹底解説!読めば「戦闘糧食って意外と面白い!」と思えること間違いなしです。
というわけで、そのレーションを「実食」することで、家にいながらの異文化理解を目指そうではありませんか。
それでは、実食レビューを始めましょう!
「MRE」=Meal, Ready-to-Eat(すぐに食べられる食料)という意味
「MRE」=Meal, Ready-to-Eat(調理不要ですぐに食べられる食料)個人向けの携帯戦闘糧食のことで、兵士が野外や戦場などの厳しい環境でも栄養補給ができるように設計されています。
MREには、高カロリーかつ栄養バランスの取れた食材が含まれており、1パックで約1200~1500kcalのエネルギーを摂取できます。
また、MREは**長期間保存が可能(約5年間)**であり、水や火を使わずに食べられるため、非常食としても活用できます。この特性から、災害時の備蓄食料としても注目されているのです。
「MRE」のスペックはこんな感じです
- 内容物:主食・副菜・スナック・デザート・飲料粉末・加熱キット(FRH)など
- カロリー:1パック約1200~1500kcal(1日2~3食分が配給される)
- 保存期間:およそ5年間(保管環境により変動)
- 携帯性:軽量・コンパクトなパッケージ
- 調理不要:そのまま食べられる or FRHを使って温め可能

米軍では、このMREレーションが1975年に正式に採用されました。
【MRE登場前の戦闘糧食】カロリー摂取を優先したため、圧倒的にマズい味付けだった過去
実はMREレーションって、今でこそ改良されて美味しくなってますが、昔は激しく不評だったんですよね。 その理由は
- いかなる環境でも持ち運べる携帯性
- いかなる環境でも食べられる保存性
を優先した結果、味つけがないがしろにされてしまい、一時期は全兵士の約半数弱が完食すらできないクオリティとなってしまったからです。
一時、兵士の間では、以下のような不名誉な略語で皮肉られたことは有名な話です。
Meals Rejected by Everyone (全員から拒否られた食べ物)
Meals, Rarely Edible (ほぼ食えない食べ物)
Meals Rejected by the Enemy (敵にすら拒否された食べ物)
Materials Resembling Edibles (食べ物に似た何か)
そんな背景もあって、この米軍MREレーションは「戦闘糧食(レーション)、ミリ飯」=不味いというイメージを植え付けてしまった戦犯として知られています。
現在のMREは、1981年から本格的に配備が始まりました。それ以前は「Cレーション」「Kレーション」などの旧型戦闘糧食が使われていましたが、保存性・栄養バランス・可搬性の面で改良が重ねられ、MREに進化しました。念のため進化の過程も紹介しておきましょう。
第二次世界大戦時の「Kレーション」
第二次世界大戦中、アメリカ軍は「Kレーション」と呼ばれる個別携帯食を採用していました。Kレーションは、コンパクトな箱に乾パン、缶詰の肉、チョコレート、インスタントコーヒーなどが入っており、簡単に携行できる点がメリットでした。
しかし、保存性や栄養バランスには課題があり、戦争が長引くにつれて「飽きる」「栄養不足」といった問題が指摘されるようになりました。
ベトナム戦争時代の「Cレーション」
Kレーションの後継として開発されたのが「Cレーション」です。Cレーションは、主に缶詰を中心とした内容で、肉や野菜の煮込み料理、スープ、クラッカーなどがセットになっていました。味は改善されたものの、缶詰なので重く、持ち運びに不便というデメリットがありました。また、長期保存可能なものの、熱帯地域では缶詰が劣化しやすいという問題も発生しました。
こんな歴史を経て1981年、アメリカ軍はMREを正式採用しました。
Cレーションの課題を克服し、より軽量で持ち運びやすく、栄養価の高い食事を提供することを目的として開発されたのです。MREは、袋詰めの食品を中心とし、缶詰の代わりにレトルトパウチを採用することで、軽量化と保存性の向上を実現しました。
MREの改良点をまとめると
MREは登場以来、兵士のフィードバックを元に改良が進められてきました。主な進化ポイントは以下の通りです。
- 1990年代:「味が単調でまずい」との意見を受け、メニューの種類を大幅に増加(12種類 → 24種類)
- 2000年代:フレームレス・レーション・ヒーター(FRH)を導入し、簡単に温かい食事が取れるように
- 2010年代以降:健康志向の兵士向けに、低カロリー・高タンパクのメニューを追加。ベジタリアンやハラール向けMREも登場
- 現在:兵士の嗜好に合わせ、民間食品ブランドとのコラボレーション(M&M、スナック菓子など)を導入
MREは今後どうなるのか
近年、アメリカ軍は「次世代MRE」の開発にも取り組んでいます。例えば、自己加熱式の包装技術の向上や、栄養価を維持しつつ軽量化を進める研究が行われています。
また、3Dプリンターを活用して、兵士ごとに栄養バランスを調整した食事を作る技術も検討されており、今後もMREは進化を続けるでしょう。

【実食レビュー】アメリカ軍MREレーションの中身を徹底検証世界最強の軍隊は、何を食べているのか?(実際に食べました)

MRE(Meal, Ready-to-Eat, individual)
気を取り直して、「悪い前評判を吹き飛ばしてくれ!」という思いで食べてみました。
MREのパッケージを開封
見た目のデザインは、デザート・ベージュ色の厚いビニールに梱包され、普段スーパーで売られている非常食とは明らかに風格が違います。これは、防水・防塵・耐衝撃性に優れており、厳しい環境下でも中身をしっかりと保護するためです。
全部で24種のメニューが存在し、中にはベジタリアン向けや宗教者のものも存在するそう。
MREの加熱方法と実際の食べ方
1パック1食分で、行動しながら食べられるスナック類が多いのが特徴ですが、何と言っても最大の特徴はFRH!

「FRH」とは、フレームレス・レーション・ヒーターのことで、水だけで加熱できる化学ヒーターです。12分で227gの料理を50度以上に温めることができます。そのままでも食べられますが温めたほうがおいしい。

FRH使用中。2000年代前半のFRHはハズレが多く、製造から時間がたったFRHは使用できないものがほとんどでした。2010年頃から大幅な改良がなされたのか、ハズレが少なくなった気がします。
「FRH」フレームレス・レーション・ヒーターの使い方
- MREの加熱用パウチを袋から取り出す
- 専用のFRH袋にメインディッシュのパウチを入れる
- FRH袋のラインまで水を注ぐ(約30ml)
- 化学反応が発生し、加熱がスタート!(約10~15分で完了)
- 温まったら袋から取り出し、開封して食べる
この仕組みは、水とマグネシウム、鉄、塩などが化学反応を起こし発熱するというもの。加熱時には蒸気が発生するため、密閉された空間では使用しないように注意が必要です。
水を注ぐだけで熱の出るヒーターは、光や煙を出さない上、雨風の影響も受けません。
水を注いで10分ほどで、温かい料理とコーヒーが完成です。
アクサリーパケット(付属品)の魅力
余談ですが、トイレットペーパー(左列中段)が付属してますね。
後、気になるのはブックマッチです。軸が紙製でできており、理科の実験でやったやり方では火はつきません。ペンのキャップを外すように、先端をヤスリにくるんで引っ張ると上手に着火できます。
【肝心のその味は?】米軍MREレーションを食べた感想
- 左上に見えるドギツイ緑色の液体は、ジュースです(笑)。。。エイリアンの体液ではありません。
→水に溶かした(溶けきれてないが)粉末ジュースが蛍光グリーン色です。なにやら劇物を想起させるジュースは意外にも・・・薄味ながらも美味しかったです。
- 今回のメインはミートボール。レトルト臭さを殺すためにバジルのシーズニングをを和えて食べる。美味い。
→特にミートボールはレトルトのわりに味が濃い目で風味も良く、バジルの香りが食欲を引き立ててきます。
- パンが2枚とチーズが入っている。
→パンは多少の薬品臭さが鼻につくものの、米軍特有の濃厚なチーズをつけることで美味しくいただけるし、身の詰まったパンなので2枚食べるとそこそこ満足感で幸せになれます。
- 空パックに詰まったピーナッツは保存食を感じさせない香り高さ。プレッツェルも同様、チーズの匂いがやや強いものの、市販品と大差ない。
→ポリポリかじることで軍隊生活のストレスを癒すのだろうなと想像します。

ちなみに、現場ではすべての内容物(粉末コーヒーまでも)をごちゃまぜにして食べることが多いなんて話も(食事は燃料補給程度の扱いなのでしょうか?)
アメリカ軍MRE用戦闘糧食(レーション)評価:星4つ
前評判が悪すぎたので、恐る恐るの実食レポとなりましたが、まあ思ったより悪くなかったので、ギリギリ3よりの星4あげましょう。
アメリカ軍MRE用戦闘糧食(レーション) | 星4 ★★★★☆ |
アメリカ料理というと、不自然に発色するケーキやとんでもない量のブリトーを想像してしまいますが、このMREレーションに関しては別物で、量よりもカロリー重視となってます。
新型米軍レーション:ファースト・ストライク・レーション
米軍には、特殊環境のための72時間用レーションが存在します。
ファースト・ストライク・レーション(通称FSR)と呼ばれるそのレーションは、
戦闘中にもすぐに食べられるサンドイッチやエナジーバーを中心とした、
きわめて暴力的な中身になっています(笑)
たまにZAPPLESAUCEという米軍版ウイダーゼリーや
デイリーバニラシェイクという地獄のようなシェイク(半端ないカロリー量)が楽しめます。
FSRとは、たった1kgちょっとのパッケージに72時間の栄養が詰まっている
戦闘のための戦闘糧食ですね。
次回はイギリス軍のレーションを実食します。お楽しみにー!

▽世界中のレーションを総まとめ!全部食べてランキング作っちゃいました!!▽

【追記】MREレーションのメリット・デメリット
MREのメリット
✅ 火を使わずに食べられる
MREの最大の強みは、加熱しなくてもそのまま食べられる点でしょう。加熱が必要な場合でも、フレームレス・レーション・ヒーター(FRH)を使用することで、火を使わずに温かい食事を取ることができます。災害時や野外活動でも便利ですね。
✅ 高カロリーでエネルギー補給に最適
MREは1パックあたり約1200〜1500kcalと、非常に高カロリーな設計になっています。兵士が戦闘や長時間の移動でエネルギーを消費することを想定しており、栄養バランスも考えられています。そのため、サバイバルや登山などのアウトドア活動にも適しています。
✅ 長期保存が可能
MREの保存期間は約5年間(保管環境による)。缶詰ではなくレトルトパウチを採用しているため軽量でありながら、高い保存性を誇ります。このため、非常食として備蓄するのにも適しています。
✅ バリエーションが豊富
MREは、24種類以上のメニューが用意されており、飽きにくいのが特徴です。さらに、ベジタリアン向けやハラール対応のMREも開発されており、兵士のニーズに応じた選択が可能になっています。
MREのデメリット
⚠️ 一般の食事に比べると美味しくない?
MREは軍用食であり、あくまで「栄養補給のための食事」です。味は年々改良されていますが、家庭の料理やレストランの食事と比べると「美味しい」とは言い難いものもあります。特に、主食は塩分が強めで、長期保存のための加工がされているため、食感がやや独特なものもあります。
⚠️ 重量があるため持ち運びが大変
MREは、1食分がパッケージされているため、一般的なフリーズドライ食品と比べると重量があるのがデメリットです。例えば、登山やサバイバルで軽量化を重視する場合、MREよりもフリーズドライ食品の方が適している場合もあります。
⚠️ 一部の成分が体に合わない場合も
MREには保存性を高めるための添加物が使用されており、人によっては体調に合わないこともあります。また、高カロリー・高塩分のため、塩分摂取を制限している人には不向きな場合があります。
あえてMREをおすすめしたい人
1. 非常食として備蓄したい人
MREは長期保存が可能で、火や水を使わずに食べられるため、災害時の備蓄食として非常に優秀です。特に、台風・地震などの緊急時には「加熱しなくても食べられる」ことが大きな強みになります。
✔ 備蓄のポイント:MREは高カロリーなので、1人1日2食分を目安にストックすると良い。
2. アウトドア・サバイバルを楽しむ人
登山、キャンプ、ブッシュクラフトなどのアウトドア活動をする人にもMREはおすすめです。携帯性が高く、カロリー補給がしやすいため、長時間の活動でもエネルギー切れを防げます。
✔ アウトドアでの活用ポイント:重量がややあるため、軽量装備を優先する場合はフリーズドライ食品との併用がオススメ。
3. ミリタリーファン・コレクター
MREは「軍用食」としての歴史や進化も楽しめるため、ミリタリーファンやコレクターにも人気があります。特に、米軍放出品や特定年代のMREはコレクション価値が高いです。
✔ 選び方のポイント:ネット販売されている軍放出品は、賞味期限切れに注意。市販MREを購入するのが無難。

まぁ、ミリタリーファンであれば一度は食べておきたいところです。
おわりに:実際にMREを試してみよう!
ここまで読んで、「MREを食べてみたい!」と思った方も多いのではないでしょうか?MREは軍用品ですが、市販の類似品や放出品が販売されており、一般の人でも購入可能です。
MREを購入できる場所
- Amazon・楽天などの通販サイト → 市販MREが手に入る
- ミリタリーショップ → 軍放出品を扱う店舗も
- 海外のアウトドアショップ → アメリカでは一般向けMREも流通
実際にMREを試してみることで、軍用食のリアルな味や工夫を体感できます。非常食としてストックするのも良し、アウトドアやキャンプで楽しむのも良し。ぜひ一度、MREの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?
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