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世界の戦闘糧食を「実食」しよう!【フランス軍編】
本レポートは、MOMCOMのEC担当部が、実際にその国の軍で食料として使われている、いわゆる「ミリメシ=戦闘糧食(レーション)」のレビュー(感想)をレポートでお届けするものです。
『株式会社MOMCOM』・・・通販サイトMOMCOM.jpの運営のほか、ウェブマーケティング等様々な事業を展開する会社。直近ではロシア内務省より公認を取得し、同機関の施設についての宣伝支援活動を請け負う。
レーションは2004年から取り扱っており、レーションだけで顧客数は2,000人に迫る(2018年12月末時点)。書籍やテレビ番組をはじめ各種メディアにレーションを提供しており、2005年以降のレーションに関わる書籍にはほぼすべてMOMCOMがレーションと情報を提供している。直近で協力させて頂いた書籍はPHP研究所の「保存食の大研究 長もちする食べもののひみつをさぐろう (楽しい調べ学習シリーズ)」
第3回目はフランス軍の戦闘糧食(レーション)です。(※参考動画は、記事の最後でご紹介してます。)
結論:最も美味しいのはフランス軍レーション
「フランス料理=高級、極上、おいしい」といったイメージがありますよね。
結論から申し上げると、各国のレーション(戦闘糧食)を食べ比べした結果、フランス軍のレーションが一番美味しかったです。
そんな一流のフランスレーションだからこそ、(おこがましくも)ズバッと鋭い意見を書きました。
まずは、フランス軍の人々は実際にはどのようなものを何を食べているのかを見てみましょう。
早速開封の準備に入ります。
![フランス軍レーションのパッケージ](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/FR3_clipped_rev_1.png)
画像は10人分ですが、フランス軍レーションは12人分が1箱に入って支給されます。
今回試食したレーションは、通称「RCIR」=「Ration de combat individualle rechauffable」と呼ばれるもの。
門外不出のフランス軍レーション
イギリス軍のレーションにも「Not for resell」と印刷されていますが、フランスのレーションも「No resale」の表記がありました。
軍隊でしか使用されない為、一般の市場に出回ることは絶対にありえません。
箱の中には、
- 3食分(朝・昼・晩)
- おやつ
が合わさった、24時間分の食料が入っていました。
フランス軍レーションに見るフランスとムスリム(イスラム教徒)の関係
![フランス軍兵士](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/frenchsoldierisl-1024x682.jpg)
http://u0u1.net/Pnnm より
一部には良く知られている事ですが、フランス軍はムスリム(イスラム教徒)への配慮も欠かしません。
かつてのフランスは、モロッコやアルジェリアといったアフリカ諸国を植民地としていました。それらの国では、歴史的な背景から多くの国民がムスリム(イスラム教徒)です。
[aside type=”normal”]例えば、世界中の誰もが知る元フランス代表(スペイン・レアルマドリードの元監督)の伝説のサッカー選手「ジダン」は、アルジェリア系移民である事は有名です。[/aside]
今回は通常用レーションですが、14あるメニューのうち、半分近くは「Without Pork」=豚を使用していないメニューなのです。
例えばアメリカ軍MREは通常メニューとベジタリアンメニューですが、鶏肉や羊肉を使って差別化するところに美食大国フランスの意地を感じます。
[aside type=”normal”]通常、SANS PORC (サンズポーク=豚無し)と AVEC PORC(アベックポーク=豚あり) とフランス語では表記されます。昔流行った言葉に、カップルを指す「アベック=(withの意味)」がありましたが、まさにこのアベックなのですね![/aside]
フランス軍のレーションを試食しよう
レーションを開封!まるでおもちゃ箱のよう
![フランス軍レーションの試食](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/rcirone.jpg)
約1.7kgのパッケージを開封。輸入品店のお菓子コーナーみたい。(画像が汚くて申し訳ない)
![フランス軍レーションの試食](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/rcirrtwo.jpg)
手前にあるビスケットと、イノシシ肉のパテが世界最高レベルで美味しいです。缶つまってシリーズありますが、あんなの比じゃありませんよ!?
- 1日分レーションは全14種類
- ムスリム向けの豚無しメニューが半数を占める。
- フランス軍レーションは美食大国の尊厳を守るためか、他国より先に味覚に焦点を当てており、当たり外れが少ないです。
今回はじゃがいもと豚肉のチーズかけ、ポークサラダがメインディッシュでした。
イノシシ肉のパテはエントレー(前菜)扱いです。
フランス軍レーションのレビュー
メイン缶詰のレビュー
「じゃがいもと豚肉のチーズかけ」も、豚肉とチーズという
これ以上ないわがままな組み合わせで、食べただけで幸せになるとはこのこと。
フランス料理の名店のシェフが時間をかけて煮込んだシチューといった感じで、
豚肉の生きた柔らかさとジャガイモの煮込み具合が絶妙です。
「ポークサラダ(実際は煮物)」は缶詰とは思えない深い味わいと、
形良く煮込まれた色鮮やかな具材が目をも楽しませてくれます。実はこのメニュー、
温めなくても美味しく食べられるように油が少なくなっており、
火を使わなくても楽しめる心遣いはまさに「軍用食」といったところ。
「イノシシ肉のパテ」は前菜扱いで、やや甘みのついたビスケットとよく合い、
あたかもカナッペ(薄く切ったフランスパンの上にトッピングをした伝統料理)
を口にしているようだった。人生で初めてのイノシシ肉が
まさかフランス軍のミリメシで経験できるなんて、誰が思うのでしょうか?
「デザートのカスタードプリン」もまた絶品で、
付属のコーヒー紅茶と共に滑らかな舌触りを楽しめます。
フランス軍レーションのビスケットやおやつのレビュー
![フランス軍レーション試食](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/biscketone.jpeg)
手前の怪しい迷彩は何だ!?
フランス軍レーションのビスケットは世界最高峰レベル
![フランス軍レーション試食](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/biscuitone.jpg)
ココナッツサブレではない
上品な甘みがついたビスケットと、塩味のビスケットが付属するが、どちらも
都内の高級ホテルでアフタヌーンティーを楽しんでいるかのような錯覚を覚えます。
特に、付属するパテやデザートと絡めて楽しめる点が最高です。
幻のコマンド・バー
![フランス軍レーション試食](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/commandbarone.jpg)
チョークじゃないよ
迷彩色のパッケージが気になりましたか?
何を隠そう、フランス軍レーションが「フランス軍」である理由の一つが
このコマンド・バー。もともとは特殊部隊用レーションにだけ付属したのですが、
あまりの現場での評価の高さを受け、2010年頃から通常レーションにも採用されました。
原料はプロテインの塊、でも味はきなこ棒、
日本の原風景を感じるのは気のせいでしょうか。
世界一のキャラメルはフランス軍レーションにあり?
![フランス軍レーション試食](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/caramercir.jpg)
弾薬箱かな?
フランス軍レーションのキャラメルは世界一硬い。
味もかなり雑で、なんでこんな物がフランス軍レーションに?と思いますが、
口の中に長く滞在させ、血糖値をゆっくり上げていくための措置です。
「ああ、三ツ星レストランじゃなくて軍用食だったな」とこんなところで実感してしまう。
面白いのが、このキャラメルを射撃の的にして遊ぶ兵士がおり、
「禁じられた遊び」と呼んでいるとかいないとか。
他にはどんなメニューがあるのか?
2018年製造のメニューをすべて列挙します。
メニュー番号 | メインディッシュA | メインディッシュB |
---|---|---|
1(豚肉無し) | ケバブミートボール | ツナフィッシュポテト |
2(豚肉無し) | チキンクスクス | サーモンライスと野菜 |
3(豚肉無し) | 野菜とラムのシチュー | 家禽のタブレ |
4(豚肉無し) | ツナのピペラード | ビーフラザニア |
5(豚肉無し) | 牛肉のトルテリーニ | オリエンタルサラダ(冷食可) |
6(豚肉無し) | チリコンカン | パスタとサーモンのサラダ |
7 | 鶏肉とエビのアジア風ソテー | メキシコ風サラダ(冷食可) |
8 | 豚肉とレンズ豆の塩煮込み | スパイシーソーセージライス |
9 | ポークライス パイナップル添え | カスレ(ソーセージ、アヒル肉、豆) |
10 | アヒルとマッシュポテト | イタリアンサラダ(冷食可) |
11 | 牛肉のラザニア | きのこ豚のリゾット |
12 | ストラスブールソーセージとパスタ | パエリヤ |
13 | パーマー鍋 | カルボナーラパスタ |
14 | 豚肉の頬とラビオール | 牛肉のサラダ(冷食可) |
[aside type=”normal”]フランス軍のミリメシもまた、メニューの入れ替わりが激しいので年度途中で入れ替わる可能性が高く、今あるメニューはもう来月にはなくなっている・・・なんてことがザラにあります。一方でツナフィシュポテトや牛肉のラザニアなど、かれこれ10年ほど生き残っているメニューも。[/aside]
評価:星5つ(満点)+更なる進化を!
仏軍24時間用戦闘糧食(レーション) | 星5 ★★★★★ |
他の欧米系レーションと同様に色々なおやつやアクセサリーが付属しています。
味はさすがフランス。抜群の安定性を誇ります。
全員でワイワイ楽しむのもいいでしょう。野外で三ツ星レストラン、いかがですか?
色々と書きましたが、最強のうまさ&コスパだと思います。
ここが惜しいフランス軍レーション
苦言を呈すとすれば、10年前に比べて仏軍レーションには以下の2点の面で余裕がなくなった」ことが悲しいですね。
惜しい点①:芸術性が失われた
10年前の仏軍レーションには余裕がありました。
![2000年初期のフランス軍レーション](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/oldrcironek.jpg)
2000年初期のフランス軍レーション
例えば、当時はビニールではなく紙で包装された角砂糖が入っていて、包装紙にネコの抽象画や風景画がカラー印刷されていましたし、その他の小物にすら何かしらの彩色が施されていました。
![フランス軍演習用レーション](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/rieone.jpg)
2000年代のフランス軍演習用レーション。角砂糖のパッケージのかわいい猫ちゃんに注目!
80年代の旧式タイプにしても、シャネルの5番にそっくりの瓶に封入されたアルコール(恐らくブランデー)や、
小洒落た包装の紙タバコ(1日分で一箱用意されていた/クラッカーに臭いが移る)など遊びがありました。
レーションそのものの価値としては贅肉をそぎ落とす作業に過ぎないのでしょうが、
当時の箱を開けた瞬間に目に飛び込む、まるでおとぎ話の国の光景を想起させる鮮やかさが
今の仏軍レーションには無くなってしまったのです(悲)。
[voice icon=”https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/02/2ed9b2aa7dc092e6be107d71b1936ce4.jpg” name=”MOMCOM” type=”r”]機能性ではなく「文化とはこういうもんなんだ!」とう雰囲気を前面に押し出していた風潮は、予算削減の波に消えてしまったんでしょうか。[/voice]
惜しい点②:サイズが一回り小さくなった
![フランス軍戦闘糧食](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/oldrcirtwok.jpg)
2000年代のフランス軍レーションの外箱。このころはまだ賞味期限やメニューがスタンプで押されていました。2007年頃から印刷になっています。
1日分レーションの他に、先ほどの画像にあった訓練用の1食分の物もありますが、
そちらも簡素な造りになってしまった挙句、
内容物の大幅なリストラで箱が1まわり以上も小さくなってしまいました。
![フランス軍演習用レーション](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/riesample.jpg)
前に移っているのが新しい演習用レーション、後ろが古いタイプの演習用レーション。通称RIEと呼ばれる。タバコはサイズ比較用です。
レーションの個性が薄まりつつある
各国、ミリメシの予算削減による共用化は足並みを揃えて行っており、
寒冷地での運用に耐えうる1日分9000kcalものカロリーを誇ったノルウェー軍レーションは姿を消しました。
![フランス軍ミリメシ](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/oldfrenchone.jpg)
フランス軍レーションも、消費期限とメニューが印刷されるようになったあたりからコストダウンの波が押し寄せている。
また、メイン料理の納入先をドイツのメーカーに委託したオランダ軍レーションは、
世界有数だった選択肢のバリエーションを失ってしまいました。
[voice icon=”https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/02/2ed9b2aa7dc092e6be107d71b1936ce4.jpg” name=”MOMCOM” type=”r”]これらを機能性の向上と呼ぶか文化の衰退と呼ぶかは個人の勝手ですが、、年々個性が薄まっていく様子は何か寂しさを覚えますね。手厳しいこと好き勝手書きましたが、味と雰囲気は最高ですので、非日常のグルメということでご家族やご友人とお試しあれ[/voice]
[おまけ1]”ナポレオン”×フランス×レーションの意外な関係性
フランスと聞くと、彼らが緻密に実行したブランド戦略の影響で、美食や芸術を思い浮かべる人も多いはず。
一方で、実はフランスほど戦争とのかかわりが強い国はありません。
![フランス軍レーションの立役者ナポレオン](https://momcom.site/wp-content/uploads/2018/05/napoleon-873x1024.jpg)
https://ja.wikipedia.org/wiki/ナポレオン・ボナパルト より
フランスは液状の固形物を長期的に保存する技術を世界で初めて「軍事目的に」開発した国で、
その立役者がナポレオンなのです。
あなたのキッチンの台所の下にある、缶詰や瓶詰は戦闘糧食(レーション)は、フランスが開発した技術の賜物です。
つまり極端に言ってしまえばレーション無しに近代的な生活は成り立たないのです!
[おまけ2]:フランス軍レーション試食ビデオ映像はこちら!
迷彩服を着ながらレビューされるYoutuber「トッカグンさん」、ガスマスク装着しながら食べてる「ぽむさん」の動画がとても個性的で見やすく仕上がっていますね。
世界一美味しい?フランスレーション!戦闘糧食はこちら(消費期限2020年〜2022年)
次回はフランス軍のレーションに並ぶ、イタリア軍レーション特集です!(超面白いレーションです)
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▽世界中のレーションを総まとめ!美味しいランキング作っちゃいました!!▽
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