「OFAC(読み方:おふぁっく)」とは何なのか?5分で全部解明。
2月末で某国関連の取引が取り扱い全面停止となるようです。
機密情報なので詳しくは公開しませんが、今月末に某国(内戦状態にある)にある
法人・個人の口座を通じた米ドル決済が、某邦銀で全面停止されるという情報を、
メガバンク関係筋から情報入手しました。
どうやら、OFACというワードが絡んでいるようです。
OFACとは、Office of Foreign Assets Controlの略語で、米国の財務省外国資産管理室を指します。
えー、外国資産管理室ってなんだろう。かっこいいけど怖い響き。
はい、その通りです。とても怖い組織です。というか米国政府組織は敵対した瞬間勝ち目がありません
【これだけ抑えよう】OFACまとめ
- OFACは、米国財務省に属するfinancial intelligence and enforcement に関する組織。
- OFACは、米国政府の脅威になると見なされる団体・個人(テロリストなど)に対して制裁を加える役割を担っている。
- よくOFACは「最も強烈だが、あまり知られていない政府機関」と形容される
- OFACの規定は明文化されたものではない
- OFACの規定に違反したくなければ International Party Questionnairesを使用し、Anti-Corruption Certificates(反腐敗防止証明)に署名を行ってから経済活動を行うこと
つまり、OFACが「ダメです」とみなした団体や個人に対しては制裁が加えられるということです。なぜなら制裁を加えるのに、決められた杓子定規なルールはないからです。
このページは「OFACとは」「OFAC規制とは」でたどり着く方が多いようですが、
OFACと米国制裁は切っても切れない関係にあるので、
OFACと米国制裁、両方知れるように文章を構成しています。
米国制裁とは
- 大統領令に基づき、ロシアの政府系金融機関とエネルギー関連企業に対して一部金融取引を禁止。(2014年)
- 上記の制裁を法制化した上で、制裁の撤廃や不適用に関する議会の事前承認を義務化。(2017年8月)
- 米国財務省はロシア政府関係者及び新興財閥、その関係者計26人と15団体を新たに制裁対象とした。(2018年4月)
大体この3要素を米国制裁と一般的に呼称します。ロシアは困ったもんですね。
なんせ貿易取引を米ドルで行っているんですから。
発行元のアメリカにはやはり勝てないのです。
米国制裁には「SDN」と「SSI」がある。
SDNとは
Specially Designated Nationalsの略で、資産凍結を意味します。
- 米国内の取引
- 米国籍の個人法人問わず、米国の金融システムで行う取引
- 米国人が関与する取引
がすべて禁止される、しかもその上で制裁対象者の資産を凍結される、という
正直逃げようがないような制裁内容となっています。
制裁対象になっているのはロシアをはじめ、北朝鮮やイラン、シリア関連の個人や企業がメインなのですが、ロシアのGaz Group(商用車メーカー)も対象になっており、実際に海外への輸出に不都合が生じるケースが散見されます。プーチン側近の個人・団体、ウクライナ・クリミア関係者もターゲットになっています。面白いのが、「プーチンの隠された個人資産を明らかにする」と2018年8月の米国議会対ロシア制裁関連法案に提出してしまったため、SDN対象者は見境なく増えていくそうな。
このページ(公式HP)で誰が、何がSDN対象なのかを検索できます。
SSIとは
Sectoral Sanctions Identifications =セクター制裁を指します。SDNと同様に、
- 米国内の取引
- 米国籍の個人法人問わず、米国の金融システムで行う取引
- 米国人が関与する取引
に関し、以下の指令の通り大きな制限をかけることを目的としています。
セクターごとに制裁内容が違うためにセクター制裁と呼ばれています。
EUのRegulation833制裁とも似通ったものがあるので、表にまとめてみました。
Regulation833・・・EU版SSIだと思ってください。2014年から有効になっています。EUはアメリカと連携を強化し、アメリカのNATO脱退を阻止するために歩調を合わせているのです。
黄色で塗られている項目が金融制裁に当たります。
米国 セクター制裁 | EU Regulation833制裁 | ||
指令1 | 対象金融機関への14日を超える①新規与信供与と②新規エクイティ取り扱い禁止 | A | 対象金融機関への30日を超える①新規与信供与と②新規エクイティ取り扱い禁止 |
指令2 | 対象エネルギー企業への60日を超える新規の与信供与禁止 | B | 対象エネルギー企業への30日を超える新規の与信供与禁止 |
指令3 | 対象防衛企業への30日超の新規与信供与禁止 | C | 対象防衛企業への30日超の新規与信供与禁止 |
指令4 | 対象エネルギー企業の深海、北極海沖での石油掘削・生産への財・サービス(ただし金融を除く)の供与禁止 | その他 | 兵器関連企業へのデュアルユース技術・物資(軍事用・民生用双方にも用いることの出来るもの)の供給、ファイナンス供与の禁止。また、ロシア深海、北極海沖での石油掘削への物資・サービス・技術の供与禁止 |
SSIに関する追加資料
三井物産戦略研究所のレポートが非常に参考になるので、抜粋してお届けします。
ロシアを猛烈に意識した内容なので、当然ながら資源が真っ先に狙われます。また、防衛産業が禁止されているのは、ロシアが米国の商売敵だからです。ミサイル防衛システム(米国パトリオットシステム VS ロシアS-300シリーズ)の売り合い合戦を横からぶん殴りに行く感じ、米国も焦ってるんじゃないでしょうか?S-300の方が高性能との噂も。
私の実体験から学ぶOFACの恐ろしさ
商社や情報機関で勤務していたときにも、このプロセスを経験しました。
特に海外に子会社や、合弁会社(JointVenture=ジョイントベンチャー)を設立するときに、現地の会社法、税法諸々を調査するために起用する弁護士事務所やアドバイザリー(アドバイスをくれる情報機関です)に対して、こうしたアンケートや、反腐敗防止の宣誓書に必ずサインし、相手にもサインを求めていました。
これのプロセスを抜かして適当にビジネスなんて行ってると・・・ある日本当にOFACやその他の米国政府機関から目をつけられて(向こうから名指しでコンタクトがきます)、、、、何年間に渡って捜査の協力に膨大なエネルギーを費やさねばならなかったケースなど、ざらにあります。
自分が関係してきた団体を持ち上げるわけではありませんが、こういう政府系インテリジェンス機関の調査力を舐めて悪事を働いていると、何十倍何百倍ものしっぺ返しを食らうことになります。
それほどまでに彼らの捜査力・情報網は強力である。とだけ言っておきます。
※捜査協力に非積極的な態度を見せていると、見せしめに巨額の罰金を支払わされるケースは結構あります。例えば日本のとある巨大総合商社は、不正な経済活動を行ったとして数逆億円単位の罰金を食らっている実例があります。
OFACに違反したときの罰金は?
敵対勢力(北朝鮮、キューバ、ロシアなど)との取引での違反の場合
- 10年間の懲役刑
- 法人向けに100万ドルの罰金
- 個人向けに10万ドルの罰金、およびその他の資金の没収
追加で、有罪判決を受けた組織または個人には、その法律で規定されている金額の2倍、または違反による金銭上の損益の2倍の罰金が科せられると定められています。
OFACに嘘をついた場合の罰金
故意に虚偽の陳述をする、または重要な事実を偽造または隠蔽すると
5年間の懲役および1万ドルの刑事罰金を受ける。
罰金がいくらか調べたいときは
最新の罰金情報は公式サイトで検索できます。
OFACが登場している最近のニュース
北朝鮮との関与を否定 ラトビアのABLV銀行
北朝鮮のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与したとの疑いが浮上しているラトビア3位のABLV銀行の幹部は19日、「いかなる違法活動にも加わっていない。(国連による対北朝鮮の)制裁違反はない」と述べ、疑惑を否定した。ロイター通信が伝えた。
米財務省がABLVと北朝鮮の不正取引を指摘して以降、約6億ユーロ(約800億円)の預金が流出したことも明らかにした。欧州中央銀行(ECB)はABLVの資金繰り悪化を受け、全ての支払いを停止させている。(共同)
引用:http://www.sankei.com/economy/news/180220/ecn1802200017-n1.html
欧州中央銀行(ECB)は19日、ラトビアのABLV銀行に対し、全ての支払いを停止させたと発表した。ラトビアの金融規制当局に停止措置を要請した。米財務省は13日、ABLVが北朝鮮のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与していたと指摘。急速に資金繰りが悪化していた。
ABLV銀行はラトビア第3位の銀行。
欧州メディアによると、ラトビア反汚職当局は17日、同国中央銀行のリムシェービッチ総裁を一時拘束した。当局は19日、10万ユーロ(約1300万円)相当の賄賂を要求した疑いがあるためと説明した。ABLVとの関連は不明。リムシェービッチ氏はECBの理事会メンバーでもある。
米財務省は13日、ABLVが北朝鮮の弾道ミサイルと関わりを持つ顧客の不正取引に関与していたとして制裁措置を発表した。
引用:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO / 27111100Z10C18A2FF2000
OFACは回避できても・・・
ロシア製航空機SSJ-100の対イラン輸出がいきなりストップ!
米国外貨管理局(OFAC)はSukhoiに対し、イランの航空会社への販売するSSJ-100航空機のための輸出証明書の要求をしなかった。しかし、 米財務省が輸出認証を出さず、輸出にストップがかかった。Sukhoiの航空機にはアメリカ製の部品が10%以上(RIAによると22%)含まれていたため、この取引には米国の承認が必要とされる。
引用:https://www.aerotime.aero/ina.hladyshava/22228-not-russian-enough-usa-stalls-2-bln-iran-sukhoi-deal
まとめ
OFACは米国財務省の下部組織で、米国の財布を守る憲兵の役割を果たしている。貿易取引がドルで行われている以上、アメリカが一方的に強い状況は変わらない。外国企業だけでなく個人の資産まで監視対象としている。制裁対象の国は基幹産業から押さえつけられ、OFACの規制を逃れてもなおまた違うルールで貿易がストップすることもある。
参考1:三菱東京UFJ銀行の「米国OFAC規制に関する留意点について」
平成29年11月現在、OFAC規制上の理由により三菱東京UFJ銀行で対応できない取引が公式サイトで以下のように記されています。
(1) お取引の当事者*の所在地・関係国・関係地等に、北朝鮮、イラン、キューバ、シリア、クリミア地域が含まれている場合(2) 米国政府により特定されている、テロリスト、麻薬取引者、大量破壊兵器取引者、多国籍犯罪組織などの関与するお取引(*注) お取引の当事者とは送金人、受取人、輸入者、輸出者、荷受人、取引に関与する銀行・船会社・航空会社・輸送船・航空機・荷揚/積荷業者、ターミナルや埠頭の所有者・運営者(運営会社)等を指します。また、関係地とは、原産地、船積地、荷揚地、仕向地、船籍等を指します。または、米国金融機関(在米支店等の米国所在の金融機関・米国に本店を置く金融機関の米国外拠点を含む)、米国法人(米国外の米国籍の法人を含む)、米国人、米国内に所在する者(米国内の外国法人・外国人を含む)が関与するお取引
[aside type=”normal”]これは三菱UFJ銀行の話ではありませんが、友人のアメリカ人によると、クリミアに住んでいたウクライナ人からの某銀行経由の取引にストップがかかりました。1ラインがCIP価格で2千万円程度、という設備納入関係の大きな金額であり、なおかつ施設の構成内容が「他の用途に転用できる、危険な取引」と判断された為です。個人取引でも金額の大小に問わず対象になってしまうので、スキームを構成するときには注意が必要です。[/aside]
おまけ:OFAC解説を動画で
OFACについて解説した動画を参考までに貼っておきます。
※英語です。内容は上記に纏めた通りです。
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