「OFAC(読み方:おふぁっく)」とは何なのか?5分で全部解明。
2月末で某国関連の取引が取り扱い全面停止となるようです。
機密情報なので詳しくは公開しませんが、今月末に某国(内戦状態にある)にある
法人・個人の口座を通じた米ドル決済が、某邦銀で全面停止されるという情報を、
メガバンク関係筋から情報入手しました。
こういったニュースを頻繁に耳にすることがあるでしょう。どうやら、OFACというワードが絡んでいるようです。

出典:wikipedia
OFACとは?
OFAC(Office of Foreign Assets Control:米国財務省外国資産管理室)は、米国政府の制裁措置を執行する強力な機関です。よく「最も強烈だが、あまり知られていない政府機関」とも形容されます。OFACは、米国政府の脅威と見なされる団体や個人(テロリストなど)に対し、経済制裁を加える役割を担っています。
えー、外国資産管理室ってなんだろう。かっこいいけど怖い響き。
はい、その通りです。とても怖い組織です。というか米国政府組織は敵対した瞬間勝ち目がありません
【これだけ抑えよう】OFAC基本情報

OFACの立ち位置 引用:日本安全保障貿易学会 第9回研究大会プログラム第2セッション:「ヒトとカネをめぐる経済制裁と輸出管理」
- OFACは、米国財務省に属するfinancial intelligence and enforcement に関する組織。
- OFACは、米国政府の脅威になると見なされる団体・個人(テロリストなど)に対して制裁を加える役割を担っている。
- よくOFACは「最も強烈だが、あまり知られていない政府機関」と形容される
- 規定は明文化されておらず、柔軟に適用される
- 違反を避けるには、国際取引における徹底したコンプライアンスが必須
つまり、OFACが「ダメです」とみなした団体や個人に対しては制裁が加えられるということです。なぜなら制裁を加えるのに、決められた杓子定規なルールはないからです。
このページは「OFACとは」「OFAC規制とは」でたどり着く方が多いようですが、
OFACと米国制裁は切っても切れない関係にあるので、
OFACと米国制裁、両方知れるように文章を構成しています。
米国制裁とOFACの関係
米国の経済制裁は、OFACの活動と密接に関係しています。たとえば、ロシア政府系金融機関やエネルギー企業に対する制裁(2014年)、制裁の法制化(2017年)、ロシア政府関係者と新興財閥への追加制裁(2018年)などがあります。

2023年2月、ロシアによるウクライナ軍事進攻に対する経済的支援ルートの断絶等を目的として、ロシアの金融機関等が制裁リストに加えられています。
大体この3要素を米国制裁と一般的に呼称します。ロシアは困ったもんですね。
なんせ貿易取引を米ドルで行っているんですから。
発行元のアメリカにはやはり勝てないのです。
米国制裁の種類:SDNとSSI
SDN(Specially Designated Nationals)とは
Specially Designated Nationalsの略で、資産凍結を意味します。
- 米国内の取引禁止
- 米国籍の個人法人問わず、米国の金融システムで行う取引禁止
- 米国人が関与する取引禁止
がすべて禁止される、しかもその上で制裁対象者の資産を凍結される、という
正直逃げようがないような制裁内容となっています。
制裁対象になっているのはロシアをはじめ、北朝鮮やイラン、シリア関連の個人や企業がメインなのですが、ロシアのGaz Group(商用車メーカー)も対象になっており、実際に海外への輸出に不都合が生じるケースが散見されます。プーチン側近の個人・団体、ウクライナ・クリミア関係者もターゲットになっています。面白いのが、「プーチンの隠された個人資産を明らかにする」と2018年8月の米国議会対ロシア制裁関連法案に提出してしまったため、SDN対象者は見境なく増えていくそうな。
このページ(公式HP)で誰が、何がSDN対象なのかを検索できます。
SSI(Sectoral Sanctions Identifications)とは
Sectoral Sanctions Identifications =セクター制裁を指します。SDNと同様に、
- 対象金融機関・企業への信用供与禁止
- 防衛・エネルギー分野に焦点を当てた制裁
- EUのRegulation833制裁と類似
に関し、以下の指令の通り大きな制限をかけることを目的としています。
セクターごとに制裁内容が違うためにセクター制裁と呼ばれています。
EUのRegulation833制裁とも似通ったものがあるので、表にまとめてみました。
Regulation833・・・EU版SSIだと思ってください。2014年から有効になっています。EUはアメリカと連携を強化し、アメリカのNATO脱退を阻止するために歩調を合わせているのです。
黄色で塗られている項目が金融制裁に当たります。
米国 セクター制裁 | EU Regulation833制裁 | ||
指令1 | 対象金融機関への14日を超える①新規与信供与と②新規エクイティ取り扱い禁止 | A | 対象金融機関への30日を超える①新規与信供与と②新規エクイティ取り扱い禁止 |
指令2 | 対象エネルギー企業への60日を超える新規の与信供与禁止 | B | 対象エネルギー企業への30日を超える新規の与信供与禁止 |
指令3 | 対象防衛企業への30日超の新規与信供与禁止 | C | 対象防衛企業への30日超の新規与信供与禁止 |
指令4 | 対象エネルギー企業の深海、北極海沖での石油掘削・生産への財・サービス(ただし金融を除く)の供与禁止 | その他 | 兵器関連企業へのデュアルユース技術・物資(軍事用・民生用双方にも用いることの出来るもの)の供給、ファイナンス供与の禁止。また、ロシア深海、北極海沖での石油掘削への物資・サービス・技術の供与禁止 |
SSIに関する追加資料
三井物産戦略研究所のレポートが非常に参考になるので、抜粋してお届けします。

https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/09/05/170907e_kitade.pdf より
ロシアを猛烈に意識した内容なので、当然ながら資源が真っ先に狙われます。また、防衛産業が禁止されているのは、ロシアが米国の商売敵だからです。ミサイル防衛システム(米国パトリオットシステム VS ロシアS-300シリーズ)の売り合い合戦を横からぶん殴りに行く感じ、米国も焦ってるんじゃないでしょうか?S-300の方が高性能との噂も。
私の実体験から学ぶOFACの恐ろしさ
商社や情報機関で勤務していたときにも、このプロセスを経験しました。
特に海外に子会社や、合弁会社(JointVenture=ジョイントベンチャー)を設立するときに、現地の会社法、税法諸々を調査するために起用する弁護士事務所やアドバイザリー(アドバイスをくれる情報機関です)に対して、こうしたアンケートや、反腐敗防止の宣誓書に必ずサインし、相手にもサインを求めていました。
これのプロセスを抜かして適当にビジネスなんて行ってると・・・ある日本当にOFACやその他の米国政府機関から目をつけられて(向こうから名指しでコンタクトがきます)、、、、何年間に渡って捜査の協力に膨大なエネルギーを費やさねばならなかったケースなど、ざらにあります。
自分が関係してきた団体を持ち上げるわけではありませんが、こういう政府系インテリジェンス機関の調査力を舐めて悪事を働いていると、何十倍何百倍ものしっぺ返しを食らうことになります。
それほどまでに彼らの捜査力・情報網は強力である。とだけ言っておきます。
※捜査協力に非積極的な態度を見せていると、見せしめに巨額の罰金を支払わされるケースは結構あります。例えば日本のとある巨大総合商社は、不正な経済活動を行ったとして数逆億円単位の罰金を食らっている実例があります。
OFACに違反するとどうなるのか?
罰則
- 10年間の懲役刑
- 法人:100万ドルの罰金
- 個人:10万ドルの罰金および資産没収
- 虚偽報告の罰則:5年の懲役および1万ドルの罰金
米国政府は厳格な監視体制を敷いており、一度目をつけられると膨大なエネルギーを費やすことになります。
敵対勢力(北朝鮮、キューバ、ロシアなど)との取引での違反の場合
- 10年間の懲役刑
- 法人向けに100万ドルの罰金
- 個人向けに10万ドルの罰金、およびその他の資金の没収
追加で、有罪判決を受けた組織または個人には、その法律で規定されている金額の2倍、または違反による金銭上の損益の2倍の罰金が科せられると定められています。
OFACに嘘をついた場合の罰金
故意に虚偽の陳述をする、または重要な事実を偽造または隠蔽すると
5年間の懲役および1万ドルの刑事罰金を受ける。
罰金がいくらか調べたいときは
最新の罰金情報は公式サイトで検索できます。
OFACの最新ニュース(2024年)
2024年2月:ロシアと中国の企業への新たな制裁
米国政府は、ロシアのウクライナ侵攻を支援したとして、中国企業数社を新たにSDNリストに追加。これにより、米国との取引が禁止され、関与した企業の資産が凍結されることになりました。
2024年1月:イラン関連の金融機関への制裁
イランの核開発支援を理由に、OFACはイラン国内外の複数の金融機関を制裁対象に指定。これにより、国際的な送金が制限され、経済活動に大きな影響を与えています。
2024年3月:北朝鮮のマネーロンダリング関与組織の摘発
北朝鮮の核兵器開発を支援するマネーロンダリングネットワークが発覚し、関連する企業および個人が制裁対象に。米国の金融システムを利用した取引が完全に禁止されました。
まとめ:OFACと米国経済制裁の影響
OFACは回避できても・・・
ロシア製航空機SSJ-100の対イラン輸出がいきなりストップ!
米国外貨管理局(OFAC)はSukhoiに対し、イランの航空会社への販売するSSJ-100航空機のための輸出証明書の要求をしなかった。しかし、 米財務省が輸出認証を出さず、輸出にストップがかかった。Sukhoiの航空機にはアメリカ製の部品が10%以上(RIAによると22%)含まれていたため、この取引には米国の承認が必要とされる。
引用:https://www.aerotime.aero/ina.hladyshava/22228-not-russian-enough-usa-stalls-2-bln-iran-sukhoi-deal
まとめ:OFACと米国経済制裁の影響

ロシア以外に制裁を受けている国一覧 OFACは仕事が早い!
- OFACは米国財務省の下部組織で、制裁執行を担う
- 米ドル決済が絡む取引は米国の監視下にある
- 個人・企業を問わず制裁対象となる可能性がある
- 規制を回避しても、別のルールで取引がストップするリスクがある

(紛争が始まる前の話)友人のアメリカ人によると、クリミアに住んでいたウクライナ人からの某銀行経由の取引にストップがかかりました。1ラインがCIP価格で2千万円程度、という設備納入関係の大きな金額であり、なおかつ施設の構成内容が「他の用途に転用できる、危険な取引」と判断された為です。個人取引でも金額の大小に問わず対象になってしまうので、スキームを構成するときには注意が必要です。
おまけ:OFAC解説を動画で
OFACについて解説した動画を参考までに貼っておきます。
※英語です。内容は上記に纏めた通りです。
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